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広告宣伝における地図使用問題に関するQ&A

企業が自社やその製品、サービスを宣伝する際に、その規模や実力をより鮮明にPRし、企業の知名度や影響力をより明確に示すために、中国地図や世界地図を使用して子会社、支店、ネットワーク、拠点、事業プロジェクト等を表示することはよくある。しかし、企業はこのような広告宣伝を行う際に、中国地図を正しく使用しなければ、、罰金等の行政処分を受けるおそれがある。


関連企業の広告・宣伝に関する行政処分の事例を検索したところ、市場監督管理機関は、『広告法』第9条第4号及び第57条に基づき、「広告が国家の尊厳や利益を損なった」ことを理由に、掲載の停止を命じたり、20万元以上100万元以下の罰金を科したりすること等行政処分を下すことが多い。また、計画と自然資源管理機関は、『地図管理条例』第15条及び第49条に基づき、企業により使用された地図が「審査に出すべきであるのに、しなかった」ことによって、また同条例第37条及び第55条に基づき、企業が「国家の関連規定に基づき、表示すべきでない内容を含む地図をインターネットでアップロードした」ことによって、是正命令、警告、10万元以下の罰金等行政処分を下すことができる。


実務上、企業が地図問題で行政処分を受けた事例は決して珍しくない。以下は、違法行為の事例を通して、よくある質問を回答する。


Q:地図上記載漏れ、誤記問題がよくあるが、主にどのようなところに注意すべきか。

A:上海のある金融会社は、当社公式サイトのトップページで、中国地図を用いて中国における設立された支店の分布を示した。その地図には、中国名の釣魚島、赤尾嶼、南シナ海諸島、帰属範囲線等の記載漏れ、中国の国土境界線の誤記、南チベット地区の国土境界線の誤記、地図審査番号の不記載等の問題があった。国の尊厳や利益を損なうことによって、違法広告の掲載行為に該当し、現地の市場監督機関に20万元の罰金を科せられた。[1]


実務上、記載漏れの問題は南沙諸島、釣魚島、赤尾嶼、九段線(帰属範囲線)、香港地区の境界線、台湾地区の境界線等にかかわることが多く、また、誤記の問題は、国土境界線、帰属範囲線、行政境界線等、南チベット地区とアクサイチン地区の国土境界線等によく見られる。 [2]


合肥市のある材料会社は、公式サイトの会社概要ページにおいて、中国地図を使用していた。その地図には台湾省、釣魚島、赤尾嶼、南シナ海諸島及び九段線の記載が漏れ、また、国境線が遮られ、覆いかぶせられていたため、国の尊厳や利益を損なうことによって、違法広告の掲載行為に該当し、現地の市場監督機関に20万元の罰金を科せられた。 [3]


この処分事例では、「遮り・覆いかぶせ」もよくある問題である。 企業は、よく自らの事情やニーズに応じて地図上に拠点や名称等の表示を追加する。編集の過程おいて無意識に一部の国境線や地域を遮ったり、覆いかぶせたりする可能性があるのに、企業によって見落とされやすい。


Q:広告宣伝時に、完全な地図の代わり、見取り図を使えば、リスクがなくなるか。

A:上海のある商業会社は、店舗地図(中華人民共和国の地図を含む)を宣伝用パンフレットに掲載した。「中国の見取図が著しく変形し、且つ不完全である」ことなどの問題があったため、国の尊厳や利益を損なうことによって、違法広告の掲載行為に該当し、現地の市場監督機関に22万元の罰金を科せられた。 [4]


上海のある食品会社は、自社ブランドの世界販売網(子会社)の分布を宣伝するため、公式サイトの広告において世界地図を用いた。「中国の見取図が著しく変形し、且つ不完全である」こと等の問題もあり、国の尊厳や利益を損なうことによって、違法広告の掲載行為に該当し、現地の市場監督機関に35万元の罰金を科せられた。 [5]


上海のある設備会社は、自社製品の世界各地への影響力を宣伝するため、自社の公式サイトにおいて、台湾(Taiwan)と中国(China)及びその他の主権国家を同じ文字サイズで併記した見取図(簡素化・抽象化した世界地図)を掲載した。その後、国の尊厳や利益を損なうことによって、違法広告の掲載行為に該当し、現地の市場監督機関に20万の罰金を科せられた。 [6]


様々な宣伝効果を取得し、また異なるシーンに合わせるため、企業は地図を拡大・縮小したり、加工(例えば局所を突出させる処理等)したりすることがよくあり、これらの変更によって、大小・縮尺の誤差、一部内容の遮り等を引き起こしやすい。それと同時に、法律法規の適用対象が表記が完全な地図だけではなく、いわゆる「簡易版」や「略図」等も含まれるため、同じく留意する必要がある。


Q:地図の図面のほか、地域名称・注記等にも注意する必要があるか。

A:企業による地図上の行政区分の表示錯誤や表記誤りもよく見られる問題である。


上記の事例のほか、「Taiwan(台湾)をChina(中国)及び/又は他の主権国家と同じ文字サイズで併記した」、「台湾島等の注記色が中国大陸地区の注記色に一致していない」 [7]、「TAIWAN REPUBLIC OF CHINA等、台湾省に対し誤った英語表現をしていた」[8]等も違法と認定された。


まず、これらの問題は直接地図に現れるだけでなく、地図の付随説明や注釈にも出ることがある。次に、中国語の名称だけでなく、英語の名称や略称も注意する必要があり、例えば、「REPUBLIC OF CHINA」、「ROC」等を使ってはならない。そして、文字だけでなく、句読点にも注意が必要であり、例えば、TAIWANとCHINAの間には、「,」しか使えず、「、」、「——」又は「/」等を使用してはならない。 [9]


その他、「香港特別行政区とマカオ特別行政区の表記方法の不一致」、「マカオ」を「マカオ特別行政区」と表記しなかったこと等も法律違反と認定された。 [10]「公開地図内容表記規範」に基づき、香港特別行政区とマカオ特別行政区を地図に省級行政単位として表示するべきであり、画面上の注記については「香港特別行政区」と「マカオ特別行政区」のフルネームでなければならない。縮尺が600万分の1以下(含み)の地図にのみ、「香港」や「マカオ」という略称で表記することができる。


Q:地図を使う際に、関わる審査批准を取得する必要があるか、審査番号を記載する必要があるか。

A:地図を審査に提出すべきなのに提出しなかったことや地図に審査番号を表記しなかったこともよく見られる問題である。


1. 事例紹介


実務上、「広告に使用した地図を審査に出さなかったり、地図審査番号を表記しなかったりする」[11] ことも企業が見落としやすいコンプライアンス上の問題である。北京のある商社は、上記と同様の問題を含む不完全な地図を公式サイトや店舗入り口に掲示した。当社は地図を審査に出すべきなのに出さなかったこと、国家の関連規定に基づき地図に表示すべきでない内容を含む地図をインターネットにアップロードしたことによって『地図管理条例』の違反行為として、地方計画・自然資源委員会にそれぞれ5万元と10万元の罰金を科せられた。[12] 


また、広告主は、地図又は地図図形付き製品の適切な場所に審査番号を目立つように表示する必要があり、さもなければ行政機関に是正を命じられ、警告その他の処罰されるおそれがある。 [13]


2. 地図審査制度


中国は地図審査制度を設けていて、すなわち、社会に公開されている地図につき、審査権を持つ測量地理情報行政機関に提出し、その審査批准を受けなければならない。 [14]


一般的に、企業による販促物、公式ウェブサイト、製品パッケージ等での地図の使用はいずれも、『地図監査管理規定』第5条第1号と第2号に規定されている地図の「展示または登載」[15] に該当する。企業が、自然資源管理機関に提供された審査番号付き公益性地図 [16]、審査批准済み地図や地図図形付き製品を使い、且つ、再度使用時に地図の内容に変更なしの場合、審査に提出する必要がない。[17] 但し、企業は自らのニーズを満たすため、公益性地図や過去に審査批准された地図を編集(例えば、拡大・縮小・トリミング等)する場合、事前に自然資源機関に提出し、審査・承認を得てから公開使用するよう注意する必要がある。


一般的に、企業は、中国国内における支店やアジア、世界等における関連会社の分布を示す地図を使用する場合、国務院自然資源主管機関による審査を受け [18]、その審査料は無料、審査期間が20営業日となっている。ただ、昨年4月1日から2023年12月31日まで、自然資源部は一部の権限を地方に委託し、北京、吉林、黒龍江、浙江、山東、広東、海南、四川、陝西等省級行政区内において、申請者により提出された地図に対し、現地の省級自然資源主管機関又は測量地理情報局が審査批准することになっている。例えば、北京の場合、北京市計画・自然資源委員会が担当することになり、現在、先にオンラインで情報を入力し、後に地図やその他の資料のオリジナルを郵送する方法を採用している。


3. おすすめの方法


中国自然資源部地図技術審査センター主催の「標準地図サービス」[19] プラットフォームは、各種標準地図(中国地図、世界地図等)のダウンロードサービスを提供しており、「地図製作」セルフサービスも提供している。


企業は、当該プラットフォームから使いたい地図をダウンロードし、及び/又はプラットフォームの地図作成セルフ機能を使用して自らのニーズに応じ地図を編集することをお勧めする。また、よくある違法地図問題の発生を最小限に抑えるため、企業が自らのニーズに応じ、より一般的で、多くの場面に使用可能で、頻繁に使用される地図を整理し、余裕をもって事前に審査に提出し、審査批准番号を取得するようにお勧めする。その後、審査批准を受けた地図の内容に微調整の必要が生じた場合、我々の経験によれば、前のバージョンが既に承認されているため、精力と時間のコストを大きく節約することができる。


実務上、広告宣伝の際、より商業的でデザイン性の高い地図を販促物として使用するため、企業は通常、標準的な地図サービスシステムのセルフサービスを利用したり、専門的な測量関係の業者に依頼したりするのではなく、専門の広告業者に依頼することになり、デザイナーもデザインを中心とし若しくはデザインを優先し、また広告法や地図関連法規に対する理解や重視度が比較的低いときがある。また、統一性を求め、利便性を考慮するために、外資企業は直接又は間接的に海外の株主もしくは関連会社が使用している素材を使用することがよくあるが、国が異なれば、広告資料への要件と基準は同じではない。


コロナ禍が安定し、国民経済が徐々に改善され、国際的なイメージが向上・強化される中、2020年以降、中国が採用した寛容監督管理、軽微な違法行為への処分免除、一般的な違法行為への軽い罰則との法令執行方針が徐々に厳しくなり、地図問題を含む違法広告に対する行政処分が厳しくなる可能性もある。法律違反による高額な罰金、公表された処分記録、世論による風評被害を最小限に抑えるため、企業は、専門チームとともに、広告宣伝前に必要なコンプライアンス審査・判断を行い、広告宣伝時に必要な追跡・管理を行い、広告宣伝の効果を追求するとともにマーケティング上のコンプライアンスの問題に注意を払うことをお勧めする。



注释:

[1] 沪市监浦处〔2021〕152020002127号参照

[2] 自然資源部発最新『公開地図内容表記規範』には、南シナ海諸島、釣魚島及び付属島嶼、台湾省、特別行政区の表記について詳細な規定があり、広告主が地図の作成、発行、使用時に参照できる。

[3](合经执)市监处罚〔2022〕108号参照

[4] 沪监管静处字(2018)第062018000780号参照

[5] 沪监管浦处字(2019)第152019001339号参照

[6] 沪市监奉处〔2021〕262021000266号参照

[7] 沪市监嘉处〔2021〕142020003782号参照

[8] 沪监管松处字(2019)第272018004356号参照

[9] 関連表現について、『国家品質技術監督局による国際標準化活動における香港、台湾、マカオ問題の正確な処理方法に関する通知』(《国家质量技术监督局关于正确处理在国际标准化活动中涉及香港、台湾和澳门问题的通知》)、『台湾の呼称問題に関する通知』(《关于涉及台湾称谓问题的通知》)、貿促法[2005]041号等参照

[10] 义市监处罚〔2022〕05133号参照

  海市监处罚〔2021〕00291号;沪市监浦处〔2021〕152020002127 号;义市监处罚[11]〔2022〕05133 号;沪市监崇处〔2021〕302021000059 号;海市监处罚〔2022〕00236 号;沪市监嘉处﹝2021﹞142020003782 号参照

[12] 京规自(东)罚字〔2021〕5号参照

[13] 京规自(海)罚字﹝2021﹞9号参照,北京のあるテクノロジー企業は、公開した地図に審査番号を記載しなかったため、『地図管理条例』に違反したとして、現地の計画・自然資源委員会から警告の処分を受けた。

[14]《地图管理条例》(2015年11月26日国务院令第664号公布)第15条参照

[15]『地図監査管理規定』第5条 次の各号のいずれかに該当する場合、申請者は、本規定に基づき、審査批准権を有する自然資源主管機関に申請を提出しなければならない:(一)地図または地図画像付き製品の出版、展示、登載、生産、輸入または輸出;(二)審査批准を受けた地図または地図画像付き製品の再出版、展示、登載、生産、輸入または輸出、且つ、地図の内容が変更された場合;(三)境外で地図または地図画像付き製品を出版、展示、登載する予定がある場合。

[16] http://bzdt.ch.mnr.gov.cn/参照

[17] 『地図監査管理規定』第6条 以下の地図は審査を受ける必要はない:(一)自然資源主管機関に直接提供された審査番号付きの公益性地図;(二)観光地、ブリック、公共交通路線路等内容が簡単な地図;(三)法令により公開が明確に義務付けられている地図、且つ、国境線、境界線、歴史的境界線、行政区域の境界線又は範囲に関わらない地図。

[18] 『地図監査管理規定』第7条 国務院自然資源主管機関は、以下の地図の審査批准を担当する:(一)全国地図;(二)2つ以上の省、自治区、直轄市の行政区域を主な表現地とする地図;(三)香港特別行政区、マカオ特別行政区、台湾地区の地図;(四)世界地図、海外を主な表現地とする地図;(五)歴史地図。

[19] http://bzdt.ch.mnr.gov.cn/download.html?superclassName=%25E4%25B8%25AD%25E5%259B%25BD%25E5%2585%25A8%25E5%259B%25BE


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