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会社従業員または人材導入に伴う特許リスクに関するQ&A

パートナー弁護士 張 青華

Q:どのような状況において、会社従業員の行った発明や創造が職務発明に該当しますか?

A:所属組織団体の業務を遂行する際、または主に所属組織団体の物質的技術条件を利用して成し遂げた発明や創作は職務発明や職務創作に該当し、特許を出願する権利は所属組織団体に帰属し、出願が承認された後、所属組織団体が特許権者となります。ただし、次の点について留意する必要があります。

(1)「所属組織団体」には一時的に勤務している組織団体が含まれています。

(2)「所属組織団体の業務を遂行する際に成し遂げた職務発明や職務創作」には次の3つの場合が含まれています。

① 本職業務において成し遂げた発明や創作

② 所属組織団体から申し付けられた本職業務以外の業務で成し遂げた発明や創作

③ 退職、元の勤務先から異動した後または労務、人事関係が終了した後1年以内に成し遂げた、元の勤務先で担当していた本職業務または元の勤務先より申し付けられた業務と関連性のある発明や創作

(3)「所属組織団体の物質的技術条件」とは、所属組織団体の資金、設備、部品、原材料または対外的に開示しない技術資料等を指します。

 

Q:会社として如何にして職務発明に関する報奨を確定すべきか?

A:(1)取り決めが優先されます

組織団体は従業員と取り決めを行ったり、または法に則って定めた規程制度の中で報奨金の額面、支払い方法及び確定方法を規定したりすることができます。

取り決めた金額は法定基準より高く設定することもでき、逆に法定基準より低く設定することもでき、組織団体は自らの業界特徴、生産や研究開発の状況、知的財産権戦略の発展ニーズに応じて自主的に具体的な基準を制定することができます。

ただし、取り決めた額面が低すぎると、司法実務において裁判所より不合理だと認定され、見直しを命じられるリスクがあります。例えば、上海市高級人民法院より公布された「職務発明・創作者または設計者奨励・報酬紛争審理ガイドライン」の第6条では、取り決めた奨励と報酬の額面が極めて低い場合は明らかに不合理であり、裁判所は事件の具体的な状況に応じて合理的な奨励と報酬を確定しなければならないと定めています。

(2)法定基準

取り決めまたは規定を定めていない場合は、法定基準を適用し、奨励・報酬を確定します。

          i.     発明に関する報奨金は3000人民元より少なくならないようにし、実用新案、意匠に関する報奨金は1000人民元より少なくならないようにする。

          ii.    特許を実施する場合、特許の有効期間内において、毎年実施される発明や実用新案に係る営業利益から2%より少なくならないもの(意匠特許の場合は0.2%とする)を報酬として、または上記比率を参考に一括して報奨金を給付する。

          iii.  ライセンス特許に該当する場合、その報酬は使用費の10%より少なくならないようにする。

注目すべき点として、中国の一部の地方立法において(例えば、天津、青海、江西、江蘇等)、定めている報酬の最低引当率は上記法定最低基準よりも高く設定しています。

Q:従業員が離職した後、会社としては引き続きその者に対し職務発明に関する報酬を支払う必要がありますか?

A:依然として支払う必要があります。組織団体より職務発明の発明者に給付する報奨に関する法定義務は強制的なもので、組織団体は従業員の離職を理由にその履行を拒絶したり、または契約や規程制度の制定等の方法で自らが負うべき当該法定義務を免除したりしてはなりません。雇用主は奨励の方法や額面についてある程度フレキシブルに管理する余地があるものの、「特許法」及びその実施細則のいずれも雇用主が如何なる理由に拘わらず当該義務の履行を免除したりまたは形を変えて逃れるようにしたりすることを認めていません。職務発明に関する報酬の支払いに条件を付けた場合、例えば、奨励対象とする従業員は集中給付日までに依然として在職している等の条件を設けた場合、無効と認定される可能性があります。

 

Q:どのような状況において、会社従業員の成し遂げた発明や創作の特許権が当該従業員の元の勤務先に帰属できますか?

A:通常の場合は、次の状況が含まれている。

(1)従業員が離職して1年以内に成し遂げた発明や創作とその者の元の勤務先での業務と関連性のある場合、その発明や創作の特許権は元の勤務先に帰属するものとなります。

(2)従業員が元の勤務先の知的成果(例えば、技術機秘密、専用情報、研究開発成果)を使って成し遂げた発明や創作、かつこれらの発明や創作の実質的な特長は元の勤務先の知的成果によるものである場合、これらの発明や創作の特許権について、元の勤務先に帰属するものとなります。

 

Q:如何にして従業員と所属していた元の勤務先との間に特許権の帰属に関する紛争リスクがあるか否かを確定しますか?

A:(1)従業員が入社する前に、元の勤務先との間に、営業秘密や競業避止等に類似した協定を締結したことがあるか否かを確認するようにします。

(2)従業員が元の勤務先から離職して1年以内に、新しい勤務先の特許出願にかかわる場合、当該発明や創作は、その者が担当している本職業務または元の勤務先より申し付けられた業務との相互関係(例えば、継承関係)について照合するようにします。

 

Q:如何にして従業員と元の勤務先との特許権帰属に関する紛争リスクを予防しますか?

A:(1)従業員に承諾書への署名を要請し、その者が元の勤務先との間の如何なる競業避止義務にも違反せず、第三者に係る如何なる営業秘密をも企業に持ち込まず、かつ元の勤務先の如何なる知的財産権の帰属について確定した義務等にも違反しないことを承諾してもらうようにします。

(2)速やかに労務契約を締結し、その者の業務ポジションと業務内容を明確にし、所属企業団体の職務遂行における発明や創作に関する知的財産権の帰属について取り決め、機密保持条項を設ける(または機密保持協定を締結する)ことによって、所属組織団体の営業秘密を守れるようにします。

(3)核心となる機密を握っている重要な従業員に対し、別途競業避止協定を結ぶことで、企業の核心的競争資源の保護を強化することができます。

(4)研究開発要員を雇い入れる際にはバックグランド調査をしっかりと行い、そして入社1年の間、その者が成し遂げた研究開発成果は元の勤務先の職務発明に該当するか否かについて注視できるようにします。新たに入社した研究開発要員がその前の勤務先に勤めて1年未満の場合、さらにその入社前1年内に勤めたその他の幾つかの組織団体にも遡る必要があります。

(5)日常業務の中で関連案件のプラン構想、実験データ、設計図面等の資料文書を作成、保存するよう従業員に注意を促し、紛争が生じた際に参考となる証明等とすることができます。


Q:従業員との労務契約において取り決める必要がある知的財産権に関する条項として主にどのようなものがありますか?

A:例えば、次の条項が含まれるようにします。

(1)権利帰属:従業員が会社業務や任務または主に会社の物質的技術条件を活用して創り上げた作品、成し遂げた発明や創作(例えば、倹約期間において請け負った案件または補助的な業務に関連する資料の電子ファイルと書面ファイル等)の所有権及び知的財産権(関連出願権を含む)はいずれも会社に帰属するものとする。会社による事前の書面承諾がない限り、従業員はそれを本契約以外の目的に用いてはならない。

(2)成果告知:従業員は、あらゆる会社の知的成果と認められた如何なる知的成果を自らより直ちに秘密の形で会社に告知することを保証する。

(3)協力義務:従業員は、雇用期間及びその後の如何なる時間において、如何なる・あらゆる書類、譲渡協定、文書とその他の書類を署名し、そして職務知的財産権を確保と保護のために会社が講じる必要があると認める可能性のある如何なる・あらゆるアクションを成し遂げられるようにすることを承諾する。


(4)条項の効力:本契約有効期間内において、契約期間の満了等の原因で本契約が終了となった後、または本契約が解除された後も、知的財産権と関連する条項は引き続き有効である。


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